25時間前までに
出発25時間前までの申込で最初の機内食をキャンセルできる仕組みを、日本航空が国際線全路線に導入
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日本航空は2022年12月15日の搭乗分より、国際線全路線で機内食の事前キャンセルを受け付ける「JAL Meal Skip Option」を開始しました。これは出発25時間前までに申し込みをすると、機内での最初の食事をキャンセルできるという仕組みです。キャンセルによる返金はありませんが、一食分につき一定額が、飢えに苦しむ開発途上国の子どもたちのための学校給食事業に寄附されます。
航空会社としては、事前に機内食のキャンセル数が把握できることにより、離陸後のキャンセルによる食品ロスを減らすことができます。乗客は、深夜便で就寝したい場合など、食事のタイミングに邪魔されることなく過ごせるメリットもあり、急なキャンセルで食事を無駄にする罪悪感がなくなります。同時に、一部が寄付されることで社会貢献をしたという実感を持つこともできます。
航空会社各社が行う持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みといえば、多くの人がCO2排出量の削減を思い浮かべると思います。国土交通省の「運輸部門における二酸化炭素排出量」に関する報告によると、2020年度の旅客輸送量あたりの交通機関別二酸化炭素排出量(排出係数)は、鉄道が28g/人キロ、バスが109g/人キロ、航空が133g/人キロでした。航空は移動距離が長いため実質排出量が大きくなることは想像に難しくありません。当社が2022年11月に発表した調査で、旅行者に航空事業者に対して今後さらに積極的に行うべきSDGsの取り組みは何か聞いたところ、1位は「エネルギーの節約や環境負荷が少ないエネルギーの利用(24.0%)」でした。次いで「ゴミの削減やリサイクルの活用(13.9%)」、「提供する料理や食品から発生する食品ロスの削減(11.6%)」と続きました。
現在、エネルギーや環境負荷に関する各航空会社の取り組みや、自分が利用するフライトのCO2排出量を、公式サイトや航空検索画面で容易に知ることができますが、一般の旅行者にとっては実感しづらいかもしれません。その点、機内食で直接目にする食品や容器は、どのように取り組みがされているか実感しやすいと考えられます。
同調査で、旅行中に実施しているSDGsにつながる行動を聞いたところ、「食品ロスの削減(43.3%)」が最も高い実施率となり、2位が「レジ袋・包装紙などの辞退(40.4%)」でした。実施していない人にその理由を聞いたところ、「食品ロスの削減」に取り組めない理由の1位は「提供される食事の量などがあらかじめ決められない、多すぎる(35.2%)」でした。ツアーや宿泊施設で提供される食事はアラカルトやビュッフェを除き、基本的に内容や量が決まっています。その場で細かく対応するにはコストや手間がかかります。機内食も同様です。現在、フルサービスキャリアの航空会社を中心に、事前に予約することで宗教やアレルギー、生活習慣などに配慮した特別食を含む、多様なメニューが選べるようになっています。食事自体のキャンセルができるということは、選択肢が増えるとともに、やむを得ない場合を除いて、乗客も搭乗前に持続可能な社会のために何ができるか考える機会になればよいと思います。
今回の日本航空の取り組みだけでなく、世界中の航空会社が現在、機内食の食品ロスに関して、知恵を絞って新しいアイデアを試しています。逆にLCCは食事を事前に予約することになりますが、LCCでも食品ロスのメッセージを発信することは可能です。当社調査では旅行中は日常生活に比べて、SDGsにつながる行動の実施率が大きく下がる結果が出ています。旅行中のあらゆる場において、乗客の関心と、そして理解と協力を促すようなきっかけづくりが不可欠と考えます。(Y)
<参考>
日本航空株式会社 プレスリリース「機内食におけるSDGsに配慮した取り組みがさらに拡大」(2022.11.16)
https://press.jal.co.jp/ja/release/202211/007042.html
日本航空株式会社「JAL Meal Skip Option」サービス概要
https://www.jal.co.jp/jp/ja/inter/service/meal/meal_skip/
国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2022.7.5)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html
JTB総合研究所「SDGs に対する生活者の意識と旅行についての調査 ~国内編~(2022)」(2022.11.21)
https://www.tourism.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/sdgs-tourism-report-20221121.pdf